mousou-wife’s blog

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能の「花伝書」に書かれた老人の役について

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一般に「花伝書」として知られる「風姿花伝」(ふうしかでん)は世阿弥によって書かれた日本最古の演劇論です。

それは600年を経た今もなお色褪せていません。

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 (写真 角川ソフィア)

明日は「敬老の日」ですが、少子高齢化と最近の政治家達による非常識な振る舞いから「嫌老」と言われて久しいですよね。

ただいつかは誰でも老いるものです。

私は少なくても「嫌老人」や「毒老人」にならないように気をつけたいと思っています。

 

家にそのヒントとなりそうな本「風姿花伝」がありましたので、もう一度読んでみました。

 

室町時代に書かれたこの本は、人や人生を花に例える所や、引き際の美しさや幽玄の憂いなどが書かれていて、単なる演劇論にとどまらず、世阿弥の考える美学についてを知る事が出来ます。

「風姿花伝」は美学の古典書

世阿弥はこの書の中で、能に於ける役割「女」「鬼」「僧侶」「老人」その他色々な役割によっての演じ方を指導するのですが、なんと1番難しいのは「老人」だとこの本の中で言っています。

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老人役は、腰を曲げて地味な服を着て演じるので普通は「花」が無いものですが、それではつまらないという訳です。

老木にも少ないながらも花が咲く。

若木には無い老いたる色気やそれ相応の美しさを老人役には求められます。

また、老人らしくしとやかに立ち振る舞うようにとも言っています。

なんと難しい要求を世阿弥は役者に対してするものだと私は思いました。

 

逆に「女」役は比較的演じやすいと書かれています。

この役には美少年が割り当てられたので、若者の持つ瑞々しさと切れ味のまま動けばそれだけで花があるからです。

観衆はこの煌びやかな衣装と花のある役者に酔いしれた事でしょう。

かつての若かりし世阿弥がそうであったように。

 

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鎌倉の10月の能舞台公演

実はこの難しい老いたる花のある演技を、世阿弥の前でした者こそが彼の父であり師でもある観阿弥なのでした。

観阿弥は52歳で死去しましたが、その亡くなる直前に世阿弥の前で演じた華やかな能舞台は素晴らしい物だったようです。

その時の感動を息子である世阿弥は「能は枝葉も(少なく)老木になるまで、花は散らで残りしなり」と「風姿花伝」に記しています。

 

こうして立派に役者としてのお手本を見せて観阿弥は亡くなり、その偉大なる父の後、1座を引き連れて観阿弥は22歳の若さで座長になったのでした。

 

座長になった後も精力的に新作を書き続け、それと同時にこの能の演劇論「風姿花伝」を26年もの歳月(30歳から56歳まで)をかけて書き上げました。

完成に26年もかかったとは、もの凄い情熱です😲

 

世阿弥は子役時代からその美しい風貌で大変な人気があり、時の権力者、足利義満のお気に入りの役者だったそうです。

という事は後ろ盾も相当あったでしょうから、金銭的にも恵まれていたと思います。

加えて教養も社交性も兼ね添えていたようなので、まさにパーフェクトですよね😊

 

それなのに、というより「それだから」でしょうか、1座はもちろん、伝統芸能である「能」を全力で守り抜くその人間力は素晴らしいです。

いつまでも花のある主役にしがみついていないで、そこは若い人に譲って自分は指導者として陰から支えていたようです。

これは今の日本の年老いた政治家達は大いに見習うべきではないでしょうか。

 

この「花伝書」に書かれたような老人像、枝葉は少なくなり若さも無くなっても、控えめに美しく花が咲く老木のような老人に私もなりたいものです。

 

そこには決して若者には真似できない人としての美学がある気がします。

 

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鎌倉 宝戒寺

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お寺では彼岸花が満開でした

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宝戒寺は別名「萩寺」と呼ばれています

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萩の花はこれから満開を迎えます

世阿弥はまたこの書で「花は必ず散る、そして四季折々に色々な花が咲く。だから人は花を楽しむ事が出来るのだ」と言っています。

 

この「花伝書」にはタイトル通り、花にまつわる素晴らしい人生哲学や人としての美学がたくさん書かれています。

私にはまだまだ分からない事がある、とても奥深い本です。

 

 


最後までお読み頂きありがとうございました。 

 
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